砂漠の夜の幻想奇談
「王子っ…」
マリアムの顔をよく見れば、彼女も涙で頬を濡らしていた。
思いは同じ。
再び出会えたことへの喜び。
「マリアム…!私の……マリアムッ!」
きつく抱き寄せ、舌で彼女の雫を舐め取り、そのまま下がって唇を奪う。
互いの存在を確かめるように。
強く、激しく。
求め合う――。
「ルームザーン、どういうことだ?」
不機嫌MAXなカシェルダの問い掛けにより、恋人達は我に返った。
「まあ……イチャつくのは後にしてくれ」
シャールカーンがコホンと咳ばらい。
ルステムとファルーズは呆気に取られて成り行きを見守っている。
「恋人が戻ってきたならサフィーア姫はいらないな?」
皮肉たっぷりのカシェルダの質問に、ルームザーンは気まずそうな表情を見せた。
これは肯定だな、と勝手に解釈する護衛官。