砂漠の夜の幻想奇談
「カシェルダ!サフィーアはどこだ?一緒じゃないのか?」
「ハルドビオス王に知られて軟禁された。おそらく東塔だ」
シャールカーンに情報を伝えると、カシェルダはチラリとファルーズを見てからルームザーンに向き直った。
「なあ、手を組まないか?」
打算をしつつ誘いをかける。
「指揮官クラスでは、お前達二人が戦を快く思っていないのは調査済みだ。さっさと終わらせるために協力してほしい」
これを聞いたルームザーンは嘲笑を浮かべた。
「協力、か…。開城させるのを手伝えと?無理な話だ。自国民の命を危険に曝したくはない」
断る姿勢を見せた彼に、シャールカーンが餌を投げた。
「素直に開城すれば市民達は殺さない」
ピクリと動くまぶた。
ルームザーンの視線が甥っ子に注がれる。
「捕虜に誓ったんだ。君にも今ここで誓ってあげようか?」