砂漠の夜の幻想奇談

「カシェルダ!サフィーアはどこだ?一緒じゃないのか?」

「ハルドビオス王に知られて軟禁された。おそらく東塔だ」

シャールカーンに情報を伝えると、カシェルダはチラリとファルーズを見てからルームザーンに向き直った。


「なあ、手を組まないか?」


打算をしつつ誘いをかける。


「指揮官クラスでは、お前達二人が戦を快く思っていないのは調査済みだ。さっさと終わらせるために協力してほしい」

これを聞いたルームザーンは嘲笑を浮かべた。

「協力、か…。開城させるのを手伝えと?無理な話だ。自国民の命を危険に曝したくはない」

断る姿勢を見せた彼に、シャールカーンが餌を投げた。


「素直に開城すれば市民達は殺さない」


ピクリと動くまぶた。

ルームザーンの視線が甥っ子に注がれる。

「捕虜に誓ったんだ。君にも今ここで誓ってあげようか?」


< 779 / 979 >

この作品をシェア

pagetop