砂漠の夜の幻想奇談
最後まで言わせない。
「優しい方々」とシャールカーン達を褒める言葉に嫉妬したのか、なんなのか。
ルームザーンは素早くマリアムに唇を重ねていた。
「……わかっているよ」
口づけを終え、囁く。
恋人の髪を優しく梳きながら、彼はシャールカーン王に向き直った。
「協力しよう。シャールカーン王に従うよ」
力強い声と眼差し。
シャールカーンは凛々しい叔父の様子に微笑んだ。
「感謝する。では早速だが、サフィーアの救出に協力を願おうか」
反対意見などないため、このメンバーで東塔に向かうべく歩き出す。
と――。
「ああ!申し訳ございません王様!」
「どうした?ルステム」
突然ルステムが叫んだので周りにいた面々は驚いた。
「いつの間にか侍女がいなくなってしまいました…!」
「ああ…本当だね。逃げたか」
先を歩かせて道案内をさせていた侍女の姿がない。
「まあ、いいよ。彼女はもう用済みだったし」
さして気にもとめなかったシャールカーンだった。