砂漠の夜の幻想奇談
さて、隙を見て逃げ出した侍女はというと、主であるマルザワーンのもとへ報告をしに行っていた。
「何!?マリアムが逃げただと!?」
「はっ、はい!敵の兵士が檻から出したようで…!」
「敵の兵士!?では城内に敵兵が潜入しているのか!?」
「はいっ…!!」
悲鳴に近い声を上げて平伏す侍女。
マルザワーンは拳をワナワナと震わせた。
「マズイぞ…マズイ!マリアムは今どこだ!?」
「場所はわかりませんが、ルームザーン王子とご一緒だと思いますっ」
いつまでもあの廊下でグズグズしているとは思えないため、侍女は確実な情報しか教えなかった。
「くっ……ならば…」
ルームザーンのもとへ兵を送ろう。
マリアムを捕まえる。
そしてルームザーンも拘束する。
彼はサフィーア王妃――人質の存在を隠していた。
立派な裏切り者だ。
父王に進言して大義名分のもと彼らを捕らえてしまおう。
マルザワーンも動き出した。