砂漠の夜の幻想奇談


 塔の最上階で一人、溜息。

寝台はないし、椅子は硬い。

ずっと座り通しも疲れるのでサフィーアはゆっくり立ち上がった。


(明日はどうなるの…?)


日は沈んだ。

夜が来る。

深い夜の訪れに身震いした瞬間――。


「サフィーア!!!!」


部屋の唯一の扉が派手な音を立てて開かれた。

見張りの兵士達が悲鳴を上げて倒れる中、サフィーアの視界に飛び込んできた彼は…。


(シャール…!!!!!)


「サフィーア!!」

息が荒い。

乱れた呼吸のまま、きつくきつく自分の妃を抱きしめるシャールカーン。

「サフィーア!!すまなかった!もう大丈夫だよ!俺が来たからっ…!俺が…!」


(シャールッ…!シャールだぁ…!)


安心できる彼の腕の中。

サフィーアの瞳からぽろぽろと涙がこぼれた。


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