砂漠の夜の幻想奇談
道中、彼はマリアムから真実を聞かされた。
マルザワーンがマリアムの代わりに、別の女性受刑者を処刑させていたこと。
遠目からの姿。
配慮といいつつ、すぐに隠された顔。
引き取れなかった死体。
これらのことが重なり、ルームザーンはまんまとマリアムが死んだと思い込まされていた。
「全てはマルザワーン兄上のせいだ。こちらの問題で貴女に迷惑をかけてしまったこと…本当にすまないっ…!」
平謝りする王子を見兼ねてサフィーアは手の平を前に出して振った。
(いいのいいの!マリアムが生きてて本当に良かったわ!)
自分は無事だし、またシャールカーンと再会できた。
それだけのことでルームザーンの全ての行動を赦せるくらい、今のサフィーアは満たされていた。