砂漠の夜の幻想奇談
戦が終わり、一週間。
敵の軍が引き上げ、カイサリアの町は復興に力を入れていた。
「マリアム」
「王子…あっ、王様…」
唯一生き残った王子ルームザーンは、王となった。
あの日から、王として忙しい日々を送っている。
今だって、城壁修理の視察を終えて城に戻ってきたところだ。
「呼び出してすまない。話があって」
「何でしょう」
マリアムを自分の寝室へ呼び出した彼は、大切なことを伝えるために彼女の手を取った。
「私の妻になって欲しい」
「…………王様…」
本当なら、こんなに嬉しい告白は他にない。
しかし、マリアムは悲しげに俯いた。
「貴方様の妻になるということは、王妃になるということです。私は……王族でも貴族でもありません。平民です……王妃など…とても……」