砂漠の夜の幻想奇談
孤独に心が潰される。
けれど、マリアムと一緒なら…。
抱きしめる力を強くして、切なる思いを彼女にわからせる。
感じ取ったマリアムは、自分も本当の気持ちを伝えることにした。
「本当は……王妃だからとか……関係ないんです」
自分が王妃に相応しくないから、なんて言うのは、逃げるための理由。
「私の身体は……汚れています。それでも……いいの…?」
もう純潔じゃない。
自分は犯された、汚れた存在。
その罪悪感が付きまとい、消えない。
目尻から頬へ涙が伝う。
ルームザーンは涙する恋人に口づけ、寝台へ優しく押し倒した。
「君の罪ごと抱きしめよう」
全てを受け入れると囁いた唇。
マリアムは涙を溢れさせながら、美しく微笑む彼に見惚れた。
「王子っ…大好きです…!」
「こら、私は王だぞ。それに、君にはルームザーンと呼ばれたい。名前で呼んでくれないか?」
名前呼びをねだれば、マリアムは頬を赤く染めてルームザーンを見上げる。
「ル……ルーム、ザーン…様っ――」
直後、落とされたキス。
この日、初めてマリアムはルームザーンを受け入れた。
後日、平民の出でありながらも王と結婚したマリアム。
聖母と同じ名前を持つ彼女は、その心の美しさゆえにカイサリアの王妃として、王と共に市民達から愛された。