砂漠の夜の幻想奇談
まず王宮の政務所から飛び出してきたのはシャールカーンの側近、バルマキーだった。
サフィーアの失踪事件に対し頭を抱えていた彼は、王と共に無事戻ってきた王妃を見た瞬間、やっと生きた心地を取り戻した。
(心配かけてごめんなさい、バルマキー)
申し訳なさそうにペコリと頭を下げるサフィーアの顔を上げさせてから、バルマキーは言う。
「ご無事で何よりです。それはそうと、王様。お疲れのところ申し訳ございませんが、至急、謁見の間へおいで下さい」
「ん?何かあったのか?」
「………それが…」
言いにくそうに視線をさ迷わせる彼に、シャールカーンは首を傾げて続きを促した。
「…行方不明でした第一王子、ダウールマカーン様がいらっしゃっております」