砂漠の夜の幻想奇談

まさかの報告にシャールカーンは口をあんぐりと開けた。

開けるしかない。

子供の頃、行方不明となった兄。

あれから少なくとも十年は経っている。

今になって見つかり、会えるとは想像もしていなかった。


「あ、ああ兄上が!?ダウール兄上が見つかったのか!?」

嬉しそうにバルマキーの肩を揺さ振る。

されるがままになりながら、背の高い側近は溜息まじりに主君を見下ろした。

「お喜びのところ申し訳ございませんが、本物のダウールマカーン王子かどうか疑わしい点がございま――」

「兄上なのだろう!?なら兄上だっ!!」

喜びに瞳をキラキラ輝かせながら意味のわからないことを言う王様に臣下は呆れた。

とりあえず、会って来いと謁見の間へ促す。

いつもなら遠征から帰還すると浴場へ直行するシャールカーンだが、今回は兄への愛が勝った。


< 813 / 979 >

この作品をシェア

pagetop