砂漠の夜の幻想奇談
サフィーアを伴い、ダウールマカーンが待つ謁見の間へ。
「ダウール兄上!」
呼びながら入れば、広間の中央にいた青年が振り返った。
白い頬。
黒い瞳。
一瞬、シャールカーンは「あれ?」と思い、固まった。
なぜか違和感を感じる。
しかし、ダウールマカーンと名乗る彼はニコリと微笑み、品のある声音で「シャール」と呼び掛けてくれた。
その笑顔を信じて、違和感を胸の奥に追いやる。
「兄上、お、お久しぶりです。よくぞ戻られました。またこうしてお会いできて嬉し――」
ダウールマカーンはシャールカーンの挨拶を手で制した。
「立ち話もなんだ。まあ、座れ」
弟に玉座を示す。
何とも偉そうな態度である。
兄と言えども王様の言葉を制するなど無礼であったが、シャールカーンは深く気にせず素直に玉座へ向かった。
隣にはサフィーアを座らせる。