砂漠の夜の幻想奇談


「おい、マジであれが第一王子?」

謁見の間の入口からコソコソと中を覗き見るトルカシュ。

隣にはバルマキー、それにカンマカーンやルステム、カシェルダの姿もある。


ハラハラと成り行きを見守っている末っ子王子をバルマキーがチラリと見た。

「カンマカーン王子は第一王子を覚えていらっしゃいますか?」

「ん~……ダウール兄上が行方不明になった時、僕は三歳くらいだったから……正直、覚えてないよ…」

記憶にないので、顔を見ても本人かどうかなんてわからない。

「あれが、ダウール兄上…か」

シャールカーンが嬉しそうだから本物なのだろう。

そう思うことにしたら、近くにいたカシェルダが口を開いた。


「気をつけろ。また誰かが良からぬことを企んでいるぞ」


鋭い目つきでシャールカーンの側近達に警告する。


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