砂漠の夜の幻想奇談

「フフッ、楽しみだな。男の子か女の子か…どちらだろう?」


(名前はどうするの?)


気が早い、まだ考えてない、と言われるかと思ったが、意外にも彼は具体的に答えてくれた。


「きっと美人な子だろうからね。そうだな……男の子なら“月”を、女の子なら“太陽”を与えたい」


月の如く美しい少年。

太陽の如く輝く少女。

そんなイメージなのだろう。


「俺みたいな名前より、綺麗な名前を付けてあげたいんだ」


(シャールの名前は綺麗じゃないの?)


疑問に思い紙で問えば、彼は筆を握り自分の名前をアラビア語でサラサラと書いた。

「シャールカーンは“敵手を滅ぼす者”という意味なんだよ」


(へー、知らなかったわ。カッコイイけれど、ちょっぴり怖いわね)


「軍人向きの名前だろう?勇ましいが綺麗じゃない」


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