砂漠の夜の幻想奇談





「第一王子ダウールマカーン様は、第八月シャアバーンに御生誕。母はブドゥール妃。乳母は侍女のクワト。従者は――」

バルマキーがシャールカーンの前で記録を読み上げる。

書記が管理する文書庫にて。

第一王子に関する記録を漁っている真っ最中だったバルマキーとカンマカーン。

途中で王様が様子を見に来たため、目を通し終えたものから報告する。


「今のところ、集まった文書はこれだけです」

机に置かれた記録の束は本一冊分にもならない量で、異様に少ない。

「これだけか…」

「はい。少ない上に、真偽を確かめるための手掛かりになりそうな情報は見当たりません」

困ったねと苦笑するシャールカーン。

その時、隣室で調べていたカンマカーンがパタパタと駆けて来た。

「バルマキー!こっちにもあったよ。公式行事の出席記録に名前が…」





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