砂漠の夜の幻想奇談
そんな文書庫でのシャールカーン達を、陰でコッソリと覗き見ていた人物がいた。
ダウールマカーンの伯父、アフマード。
彼は豊かなヒゲを撫でながら、うるさく鳴る心臓を落ち着かせようとした。
(お、落ち着け…落ち着くんだ…!奴らが必死で調べようとも何も出てきやせん!)
あらかじめ文書庫からは不利になりそうな記録を持ち出した。
(上手くいく。そう、絶対にバレないはずだ!)
自分の息子をダウールマカーン王子だと偽って謁見させた。
妹のブドゥールと手を組んで実行に移した、大それた計画。
オマル王が死んだ今、行方不明でなければダウールマカーンが一番王位に近い存在なのだ。
(諦めんぞ!我が一族が王家を乗っ取ってやるのだっ!)