砂漠の夜の幻想奇談
魔神はスススと近づき、サフィーアの隣に座った。
(ダハナシュ、こんにちは)
筆を滑らせれば、紙を覗き込みながらダハナシュはサフィーアの髪を弄る。
「挨拶はいいから姫の愛がほしい」
(むう。あげないもん)
愛情の安売りはしてません――そう書いたら突如、耳に唇が寄せられ…。
「フウッ――」
(ひゃあっ!?)
息を吹き掛けられた。
ビックリしたのと感じそうになったのとで、身体を大きく跳ね上がらせるサフィーア。
「なにやってるの!!離れなさい!王様を呼ぶわよ!?」
目をつり上げたドニヤがダハナシュの服を引っ張る。
しかし、魔神はびくともしない。
なんとかしてサフィーアから引きはがそうと奮闘するも、余裕綽々たる面持ちで一向に離れないダハナシュ。
そんな魔神に対し苛立ちを覚えたドニヤが、護身用の短刀を抜こうとした瞬間――。