砂漠の夜の幻想奇談
「俺の至福を邪魔してくれるな」
ダハナシュがパチンと指を鳴らす。
すると、ボンッ!!と派手な音が響いた。
(な、なに!?)
爆発のようなその音は、ドニヤから発せられたらしい。
サフィーアが椅子から立ち上がり、慌ててドニヤに駆け寄る。
と――。
「ニャア~……」
(え……?)
ドニヤが立っていたところには、一匹の黒猫が。
(あれ…?ドニヤは?ドニヤはどこ!?)
周りを見回すも、ドニヤの姿はない。
サフィーアが頭に疑問符を浮かべた時だった。
黒猫がニャアと鳴きながらサフィーアの足をペシペシしてきた。
(えっ…と…)
ジッと黒猫を見つめる。
ピンと尖った耳。
キリッとしたつり目。
ボディーはスマートだが、毛はフサフサしていて手触りが良さそうだ。
ターキッシュアンゴラという種類を彷彿とさせるその猫は、サフィーアの前で何かを訴えるように鳴く。