砂漠の夜の幻想奇談
(もしかして…)
サフィーアは恐る恐るダハナシュに視線を移した。
サフィーアの眼差しに気づき、意地悪げに笑う魔神。
「ドニヤは猫の方が愛らしいとは思わないか?」
(や、やっぱり!!この黒猫、ドニヤなのね!?)
ダハナシュの指パッチンで猫に姿を変えられたドニヤ。
確かに可愛いが、人間に戻すよう抗議する。
「嫌だ。戻したらまた邪魔するだろう?」
(ダハナシュ!)
サフィーアが頬を膨らませ「怒ってます」をアピールしていると、部屋の入口からひょっこりファリザードが姿を現した。
「失礼致しますの。王妃様!遊びに来ましたわ!」
(ファリザード姫…!いつも突然ね)
まだバルマキーと結婚していない彼女は、ちょくちょく後宮に遊びに来る。
本来ならシャールカーンの側室でもないファリザードがここに入ることは許されないのだが、王様が特別許可を出したらしい。
サフィーアのために。