砂漠の夜の幻想奇談


(え?嘘!?ちょっと待って!ファリザード姫~!)


部屋から出て行った子猫ファリザードを追いかけるサフィーア。

見失っては大変と、小走りで廊下を進む。


(どこまで行くの~!戻って来て~!)


心の中で叫べば、真っ白もふもふの子猫は廊下の突き当たりで急停止した。


(良かった!行き止まりね)


サフィーアも止まり、追い詰めた子猫を刺激しないようにしゃがみ込む。


(おいで~。怖くないよ)


ジリジリ近寄って捕獲を試みていると、後ろからバタバタと足音が聞こえてきた。


「サフィーア様!」


(あ、ドニヤ!)


人間の姿に戻っているドニヤがダハナシュを引っ張って駆けて来る。

「いだだっ!お前、本当に乱暴な女だな」

強引に腕を掴まれているダハナシュの顔には、なぜか無数の引っ掻き傷が。


(ドニヤ…もしかして、猫の爪でダハナシュの顔を引っ掻いたんじゃ…)



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