砂漠の夜の幻想奇談
サフィーアの「おねだり」――それはアブリザの部屋で午後のひと時をのんびり過ごしたい、というものだった。
誰かが母親の部屋を使うのを嫌がっていたシャールカーンだったが、サフィーアならいいよと微笑みながら許可。
早速サフィーアは翌日の午後、編み物を持ってそこを訪れた。
(なんだか、落ち着くなぁ)
シャールカーンと同じ香りがするからだろうか。
長椅子に腰掛けて、リラックス。
と、不意に視界に入ったテーブルの上。
そこには自分の手の平よりも少し大きめの本が何冊か積まれていた。
(確か、アブリザ王妃も文字が読めたのよね)
何を読んでいたのだろうか。
ちょっと興味を持ったサフィーアはタイトルを見ようと一番上に置かれていた本を手に取った。
しかし、表紙にタイトルが書かれていない。
不思議に思いパラリとめくる。