砂漠の夜の幻想奇談
(あれ?これって…)
ページをパラパラとめくっていけば、物語や詩集でないことは一目瞭然。
(これ……日記だわ)
ラテン語で綴られた優美な文字の書き出しにはページごとに日付が記されている。
(よ、読んだらマズイわよね。日記って、プライベートなことが色々書かれてるものだし…)
本を閉じようとしたサフィーアだったが、ピタリと手を止める。
(シャールのこととか……書いてあるかしら…?)
自分の知らない、出会う前のシャールカーンを母であるアブリザ王妃はずっと見てきたのだ。
(小さい頃の思い出とか知りたいな~。シャールってどんな子供だったのかな?恥ずかしい失敗談とか書いてないかしら)
もはや頭の中はシャールカーンでいっぱい。
しかも弱みを握ろうとするかの如く失敗談を探す。