砂漠の夜の幻想奇談
(な、に…これ……)
心拍数が上がる。
(ダウールマカーン王子の捜索?それを王様にお願いしたのが、シャールの母上…?)
文面からして、アブリザ王妃がオマル王に何か言ったのは間違いない。
手紙の送り主はそれについて感謝を述べているのだから。
おそらくアブリザ王妃はシャールカーンの兄の身を心から案じて王様に捜索を頼んだのだろう。
(兄上が捜索されてたこと、シャールは知ってるのかしら?)
十年以上も前の出来事だ。
知っていたとしても、忘れているかもしれない。
(今、ダウールマカーン王子のことが問題になってるし…。この手紙、後でシャールに見せてあげよう…!)
そう決めて、もう一度文面を読み直す。
(内容も気になるけど……この書き手の名前…)
カシェルダ・イブン・モソラ・イブン・マスーラ。
(カシェルダ…?)
自分の護衛官の顔を思い出す。
(そんな……まさかね)
偶然の一致だろうとサフィーアは頭を振ったのだった。