砂漠の夜の幻想奇談
さて、第一王子捜索の報告書であるが、探し始めてから三日。
未だに文書庫からはそれらしいものが出てこない。
「ない…!!見つからない!!」
一枚も発見できていない現状に大声を上げる王様。
「ないないないないないっ!!!!!」
「シャール兄上!落ち着いて…!」
「根を詰め過ぎでは?ちょっと気分転換でもして来て下さい」
しれっと言ったバルマキーにシャールカーンが吠える。
「そんな暇はない!早く兄上捜索の報告書を見つけて、あの男が本物か偽者かハッキリさせてやるんだ!」
メラメラと燃える瞳に、振り上げられた拳。
兄の意気込む姿を見てカンマカーンはパチパチと小さく拍手を送った。
「僕も頑張りますね、兄上!」
「ではカンマカーン王子。そこら辺にいる召使をつかまえて、水を三人分頼んできて下さい」
「わかったバルマキー!」
素直なカンマカーンはタタタと廊下へ飛び出した。
「おい!バルマキー!カンを使い走りにするな!第三王子をなんだと思ってるんだお前はっ!」
「忙しい時には王子でも使えという諺が…」
「そんな諺はない!」
涼しい顔をしているバルマキーを睨んでから、シャールカーンは額を押さえて溜息を吐き出した。