砂漠の夜の幻想奇談
いや、今は理由などどうでもいい。
「それが本当なら由々しき問題!兄上、貴方も報告書を探すのです!」
きつく言えばアフマードは困ったようにヒゲを撫でた。
「しかしだな、探そうにも王様達が…」
「ならば盗みなさい」
「はっ?」
王太后はニヤリと笑う。
「王様達が発見したのを公にされる前に盗み出すのです。その方が無駄な労力を使わずに済みます」
妹の考えに賛同し、アフマードも意地悪げに微笑した。
兄の同意を目で確かめてブドゥールはさらに言う。
「しかし、もし盗むのが困難な状況であれば……わかっていますよね」
アフマードの腰に下がる三日月刀をちらりと見遣り、一言。
「奪いなさい」
血が流れようとも、構わない。