砂漠の夜の幻想奇談
到着した軍事資料室には先客がいた。
「バハラマーン将軍!」
「おお!カンマカーン王子!このような場所にいかなるご用で?」
今回の戦の記録をまとめていたのだろう。
バハラマーンは机に並べられた文書から顔を上げた。
「報告書を探してるんです。十二年前、行方不明になったダウール兄上が捜索されていたらしくて」
「なんと!それは初耳ですな。捜索を行ったのは軍の人間ですか?」
「それは…うーん……わかりません」
カシェルダという人物が捜索を行ったようだが、手紙には名前しか書かれていなかった。
「カシェルダ・イブン・モソラ・イブン・マスーラという人です。将軍、この名前に心当たりはありますか?」
「むっ……わかりませんな。十二年前の人物ですか……名簿を調べてみましょう」