砂漠の夜の幻想奇談

ダンダーンの話を聞いていたカンマカーンは飛び上がる勢いで声を上げた。

「その報告書なんだけど、見つかったんだ!軍事資料室にあったんだよ!これがそう!」

「なっ!まことで…!?」

腕に抱えられた文書を見せられ、ダンダーンは目を丸くした。

「これを読めば、あの男の発言が間違ってるってわかるよ!今ここにいるダウール兄上は偽者だって、証明できる!」

「ではお急ぎ下さい!王様のもとへ…!」

「うん!」




王の居室へ向かって駆け出すカンマカーンの姿を、アフマードの両目が捉える。


見てしまった。

聞いてしまった。

妹の宮殿から戻って来た丁度その時に。

廊下の柱の陰に身を潜め、全てを――。


(くそっ!!あれが王様の手に渡る前に、なんとしても…!)


奪わなければ。


彼は三日月刀の柄を握った。








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