砂漠の夜の幻想奇談
それは突然だった。
もうすぐで兄のいる部屋へ到着するという時、カンマカーンはアフマードに呼び止められた。
「アフマード殿……なんですか?」
カンマカーンは敵を睨みつけた。
普段のおっとりさはどこへやら。
声もやや低めだ。
威嚇するような表情をされたが、怯むことなくアフマードは傍に近寄った。
「いやぁ、少しお話がございまして…」
ヘラヘラ笑う敵に対し、カンマカーンは蔑みを送る。
怒りに満ちた王子の瞳。
「話とは?さっさと話して下さいよ」
あからさまに敬意を欠いた口調を耳にして、アフマードはヘラヘラ笑いをやめた。
本性を剥き出しに詰め寄り、三日月刀を抜く。
「なっ…!?」
まさか剣を抜いてくるとは思っていなかった。
後ずさろうとしたカンマカーンだったが…。