砂漠の夜の幻想奇談

「ぐあっ…!!」

胸部の下に刃が食い込む。

「……っ…!」

痛みのあまり、カンマカーンは叫ぶこともできずに目を見開いた。


「ああ゙あっ…!!!」

刃が引き抜かれ、血が飛んだ。


周囲に人の気配はなし。

助けは来ない。

アフマードはニヤリと笑む。


カンマカーンの手から力が抜け、バラバラと報告書が落ちた。

「……っ…そ…!」

彼自身も傷を押さえながら床に崩れ落ちる。

そんな王子の背中に、アフマードはもう一突きお見舞いしてやった。

「がっ……ぁっ!!」

ドサリと倒れ伏すカンマカーン。


「へっ、へへ…報告書はいただきますよ」


刀を鞘におさめ、散らばった報告書を拾い上げる。

二度も刺したのだから、このまま放置すれば王子は出血多量で死ぬだろう。

後はずらかるだけだ。

重要文書を抱えてアフマードが歩き出そうとした瞬間――。


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