砂漠の夜の幻想奇談


 これはどういうことなんだ、とシャールカーンは自身の目を疑った。

目の前がグニャリと歪むような錯覚に陥った後、やっと現実を見た。


「カ、ン…?」


呼び掛けても、返事は返ってこない。

閉じきっていないまぶたから覗く瞳は、動くことなく一点を見つめ続ける。


「カンッ…!!」


駆け寄り抱き起こすも、唯一の弟は重力に逆らうことなく身を崩した。

抱き起こした際、自分の手にべったりと付着した血を見て、わなわなと肩を震わせるシャールカーン。

「これはっ……どういうことなんだ!!」


カンマカーンの死。

悲しみ、怒り。

矛先は無論、傍にいたアフマードに向けられる。

「貴様かっ!貴様がカンをっ!!」

「ひっ!ち、違います王様っ!!私はっ!」


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