砂漠の夜の幻想奇談


 王の居室で一人、報告書の内容を全て読んだシャールカーンは弟同様、しばし仰天のあまり口がきけなかった。

「こ…れは……」

再度読み直し、呟く。

「これが事実ならバスラに逃げたとかほざいたあいつは完全に偽者だな」

確信してから、ふと最後の報告書に目をとめた。


「しかし…この続きがないとなると…兄上は一体……」


報告書は「第一王子を発見したため、これからバグダードに連れ帰る」というもので終わっている。

だが実際には第一王子は王宮へ戻ってきていない。

これは一体どういうことだろうか。

「報告書に嘘を書くとは思えないし……考えられることは…」

バグダードに連れ帰る途中で何かあった。

「何があったんだ…兄上っ…」


こればかりは考えても答えは出ない。

ひとまずシャールカーンはバハラマーン将軍を探しに廊下へ出た。




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