砂漠の夜の幻想奇談
王弟の葬儀は厳かに行われた。
年若い王子の柩が街の大通りを通った時、大勢の市民達が悲しみの表情で目に涙を浮かべた。
プライベートで彼を知らない市民達でさえこの嘆きようなのだ。
カンマカーンの母、ゾバイダ王太后の悲しみは計り知れないものであった。
「嗚呼、カン…!!私の可愛いカンマカーン!!」
形式張った葬儀が終わった後も、母親は自室で泣き続けた。
「こんなはずではなかった…!こんな、はずでは…!!」
カンマカーンが王になることをどれだけ夢見たことだろう。
彼女にとって息子のカンマカーンは己の人生の全てだった。
育ての親によく言われたものだ。
――ゾバイダや。貴女は王様の御子を生むのですよ
物心ついた頃から次代の王を生むためだけに沢山のことを学んできた。
王妃としての教養を叩き込まれ、十二歳で後宮に入れられた。