砂漠の夜の幻想奇談
第二十九話:ホンモノとニセモノ
「申し訳ありません王様!ほっとんど収穫なしですっ!」
帰って来るなりトルカシュは勢いよく頭を下げた。
ブドゥール王太后の実家について調査するべく、わざわざバスラへ赴いたが、骨折り損のくたびれ儲けだったようだ。
「みんな口が堅くてダメです。あ、でも長男は旅行中とか言ってました」
アフマードには息子が三人いる。
次男と三男はバスラにいたが、長男の姿がなかった。
「大方、その長男が今ここにいるダウールマカーンだろう」
トルカシュの隣にいたカシェルダが嘲るような口調で言った。
「わかったよ。ご苦労、トルカシュ」
聞き役だったシャールカーンが口を開く。
「ところで、こんなものを見つけたんだが」
例の報告書を二人に手渡すと、トルカシュは目を丸くし、カシェルダは口元を手で覆った。