砂漠の夜の幻想奇談
「ふ…ふふっ、ふははは!!」
「カ、シェルダ…?」
突如、声を上げて笑い出したカシェルダに誰もが唖然とする。
呼び掛けたシャールカーンも言葉に詰まった。
「ははっ……はぁー…まさか、こうなるとはな」
笑い終えた彼は無表情でバキータの鎖を外した。
野放しとなったバキータに周りが短い悲鳴を上げる中、カシェルダは冷静な声音で一言。
「バキータ、おいで」
信頼する声に反応し、バキータは吠えながらカシェルダに擦り寄った。
「これは…意外でした」
「マジかよ…!」
口をあんぐりと開けたバルマキーとトルカシュが、ホワイトタイガーとじゃれ合うカシェルダを凝視する。
カシェルダは周囲をグルリと見回すと、バキータを優しく撫でながら不敵な笑みを浮かべた。
「そう…オマル・アル・ネマーンの息子、第一王子は俺だ。俺が…ダウールマカーンだ」