砂漠の夜の幻想奇談
皆が一様に言葉を失い、目を丸くする。
その中で真っ先にカシェルダへ食ってかかったのはブドゥール王太后だった。
「う、嘘だ!お前が私の息子だと!?信じられるか!!」
怒鳴った瞬間、カシェルダがギロリとブドゥールを睨む。
昔、彼女に対してよく向けていた、冷たい眼差し。
これを受けてブドゥールは過去のダウールマカーンをまざまざと思い出した。
「っ…!!その反抗的な目…!」
鞭を振るった後は必ずこの目で見上げられた。
冷や汗が流れる。
そう、彼こそが本物の息子なのだ。
「ダウールッ…!」
唇を噛んでわななく母親を冷笑し、真の第一王子は上着を脱ぎ始めた。
そして上半身を露わにさせると、憎き相手に背中を見せる。
「見ろ!!鞭を振り回した貴様が俺につけた傷痕だ!!忘れたとは言わせない!!」