砂漠の夜の幻想奇談

「なっ、何を申されますか!私は…!」

慌てて反論しようとしたダリラに対し、カシェルダはそれを許さなかった。

「貴様が俺の飲み物に麻酔剤(バンジ)を入れて眠らせようとしたことはハッキリ覚えているぞ!朦朧とした意識の中、貴様の刃を受けたおかげでな」

話しながら長い前髪を手で掻き上げる。


(あっ!あの傷痕!)


そこに現れた傷を見て、サフィーアは以前のカシェルダのセリフを思い出した。



――丁度、額からまぶたにかけて切り傷がありまして。人が見たらいい気分はしないでしょうから、前髪で隠しています



彼は傷痕を残しておきたいとも言っていた。


(まさか…こんな…)


敵に言い逃れをさせないためだったとは。

想像もしなかった理由にサフィーアは目を瞬かせる。


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