砂漠の夜の幻想奇談
いきなり矛先が自分に向いて焦ったのはもちろんゾバイダだ。
「な!?なぜ私が!?私は関係ありません!ダリラがやったのなら全てダリラの責任でしょう!ダリラを捕らえなさい!」
全責任を侍女になすりつけようと声を荒げる。
この滑稽な焦り具合にカシェルダは笑い、シャールカーンは渋面を作った。
「ははっ!己の侍女を切り捨てたか」
「関係ない、か……わかったよ。そうさせて貰おう。衛兵!」
再び呼べば、王の命令にすっ飛んで来た兵達がダリラの腕を掴み、無理矢理彼女を引きずって行った。
引きずられながらもこちらを向き、カシェルダに対して悪態をつく老婆。
その姿を一瞥してから、真の第一王子は改めて王を見つめた。
「シャール」
「カシェ…いえ…兄、上…」
面と向かった呼び掛けにシャールカーンはたじろいだ。
「今更だ。カシェルダでいい」
剣を鞘に納めて、脱いだ衣服を着る。
「そんな…無理です!兄上は兄上なのですから!」
律儀な弟に苦笑し、カシェルダは言った。
「お前とサフィーア姫に話がある。場を移さないか?」