砂漠の夜の幻想奇談
第三十話:兄の選択
謁見の間にいた一同を解散させてから、シャールカーンとサフィーア、そしてカシェルダは三人だけで王の居室へ移動した。
侍女も警備兵もいない。
真に三人きりの室内に、気まずい空気が漂う。
何とかするべくサフィーアは意志疎通のために必須な用具を手に持ち、カシェルダに話し掛けた。
(ビックリしたわ。まさかカシェルダがシャールの兄上だなんて)
文章を読んだカシェルダはしゅんとなる。
「驚かせてしまい申し訳ございません。姫」
別に咎めるつもりはないのだが、必要以上にうなだれる護衛官。
(シャール、どうしてカシェルダが兄上だって気づかなかったの?うっすら記憶にあったのでしょう?)
指摘してやれば、ウッと顔を引きつらせる。
「確かに…見た目は兄上を彷彿とさせたが、中身が……俺の記憶の兄上と、全然違ったから…」