砂漠の夜の幻想奇談
シャールカーンは指を折りながら数え出した。
「最初から喧嘩腰だったし、よく俺を睨んでたし、優しさのカケラもなかったし…」
思い出して落ち込む。
「本当にカシェルダが兄上なのか…?」
「至極残念だが、俺がお前の兄だ」
「ではなぜ言って下さらなかった!?どうしてあんなに、冷たかったんだ…!」
捨てられた子犬と同じ瞳でシャールカーンは兄を見つめる。
今までの素っ気ない態度は演技だった、と言って欲しい。
全て正体を気づかれないためのお芝居だったと。
しかし、カシェルダはしばしの沈黙を終えてからこう言った。
「言っただろう?“あまり思い出の兄を美化するな。もしかしたらお前の兄は、お前のことを憎んでいたかも知れない”と…」