砂漠の夜の幻想奇談
言葉が脳に突き刺さり、一瞬思考が停止する。
「憎、んで…いた、のか…?俺、を…?」
声は震え、少し掠れていた。
動揺しているのが丸わかりであるにもかかわらず、カシェルダは容赦なく本音を口にする。
「ああ。憎んでいたな。……というより“嫉妬していた”の方が正しいか」
もう胸に秘めておく必要もない。
カシェルダは過去の自分の思いを打ち明ける。
「お前を取り巻く環境の全てが羨ましくて妬ましかったんだ。お前自身のせいじゃないから、この世の終わりみたいな顔をするな。ウザったい」
「ウ、ザった…!?む、昔の兄上なら…俺にウザったいなんて絶対言わなかったのに!」
「すまないな。これが地だ」
弟の前では「良い子」の姿しか見せなかった。
早く素の兄を受け入れて、慣れてもらいたいものである。
しかし「ウザい」の一言で驚愕しているシャールカーンでは、いつになることやら。