砂漠の夜の幻想奇談
「シャール、お前に一つ言っておきたいことがある」
「……なんでしょう」
まだ複雑な表情をしている弟に呆れつつ、カシェルダは自分の思いをハッキリさせた。
「俺は王になる気はないからな。降りるなよ」
「え…?」
「玉座から降りるなと言ったんだ。お前のことだ。俺が戻ったなら王位を退こうとか、チラッと考えただろう」
「うっ…」
どうやら図星だったらしい。
カシェルダはフッと笑った。
「俺はこの先も護衛官として姫をお護りしたい。このままでいさせてくれ」
「そんな…!ですが、兄上」
「王位など俺にとってはクソ食らえだ。いいな?シャール」
有無を言わさない兄の眼差し。
上から目線の威圧は、シャールカーンを蛇に睨まれた蛙状態にさせる。
返事は一つしか許されない。
「………はい、兄上」