砂漠の夜の幻想奇談

一定の距離を保ってジロジロ見つめてくる召使達から逃げるように歩いていると、二人は前方からやって来るシャールカーンと目が合った。

「あわわっ王様!こんなところに来ちゃダメですよ!」

ここは召使が使用する、言わば裏廊下である。

トルカシュはちゃんとした広い回廊へ兄弟を押しやった。

「強引だねトルカシュ。別に良いじゃないか。昔はつまみ食いしによく厨房へ行っていたんだから」

「ダメです!昔と今じゃ全っ然お立場が違うんですからね!しっかりして下さいよ~もうっ」

従者の小言にちょっぴりむくれるシャールカーン。

しかしその膨れっ面も、兄が構ってくれると笑顔に早変わり。

「シャール。トルカシュに言われたらオシマイだぞ」

「そうですよね、兄上。トルカシュに言われたくないですよね。以後気をつけます」

「あっ!お二人ともヒデー!」


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