砂漠の夜の幻想奇談
「ダハナシュか…」
涙を拭きもせず、シャールカーンはダハナシュを見つめた。
「どうされた?なぜこんな砂漠のど真ん中に?」
「サフィーアが……消えたんだ」
俯いて小さな声で答えれば、魔神は「嗚呼」と呻いた。
「消えたか…」
「ああ…。消えて…しまったんだ…」
「で、姫を復活させてくれるよう願った代償がこれか?」
月明かりに輝く金髪に見惚れながらダハナシュが問い掛ける。
「いや…願ったのはシャムスの…娘の未来だよ。おかげであの子は目を覚ました」
「ならサフィーア姫は?消えたままでいいと言うのか?」
挑発的に言ってやれば、面白いくらいにシャールカーンは反応した。
俯いていた顔をガバッと上向かせる。
「良くない!!良くないが……俺はシャムスを助けるのに全てを捧げた…。もう、取引する材料が…俺にはないっ」