砂漠の夜の幻想奇談

「……できなくはない。だがあの小娘の全てを完璧に復活させるならば、かなりの時を要するだろう」

身体だけ模倣した方が楽な上、早く造り出せる。

が、シャールカーンが望むサフィーアはダハナシュが望むサフィーアと同じものだ。

「どれだけ時間がかかろうと構わない。たとえそれが千年後でも、俺は待ち続ける…」

もう一度、愛しい少女を抱きしめるためならば。

「俺には永遠の時間があるらしいからな」

自嘲気味に微笑めば、ダハナシュが納得したように手を打った。

「そうか。魔神になったのか。これは好都合だな。王子もいくらでも待てるわけだ」

二人揃ってマイムーナをジッと見遣る。

無言の圧力を受け、とうとう魔神の女王は折れた。

「わかった!わかったわ!全く…こんな面倒を引き受ける我に感謝せい」

元はと言えばお前が消したんだろう、とは言わない。

黙っておいた方が利口だろう。



「サフィーア…」

窓辺から見える月を見上げる。

「いつかまた、お前を…」




こうしてシャールカーンは待ち続けることを選択した。

ただ独り、砂漠にて。




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