砂漠の夜の幻想奇談
「あーあ、結婚か…」
自室にて一人、窓辺に腰掛け庭の樹木をボンヤリと眺める。
「はぁ…」
悩ましい溜息がこぼれた。
ふと枝に目をやると、そこで翼を休める小鳥を発見し「おいでおいで」と呼んでみる。
すると、少女の髪と同じ漆黒の小鳥はピチチと鳴いて窓辺へ飛んできた。
「小鳥さんはいいね。貴方が持っている自由が羨ましいわ」
愛くるしい小鳥の丸い瞳を見つめて語ってみるも、当然返ってくる言葉はない。
「恋してみたかったな…」
憂鬱さを孕んだ言葉は、何もかもを諦めたような嘆きに似ていた。
そんな少女の表情を、漆黒の小鳥はただジッと観察していたのだった。