砂漠の夜の幻想奇談
気分が乗らないまま日は過ぎ去り、明日はとうとう結婚式当日。
少女はドキドキと高鳴る胸がうるさくて夜が更けても中々寝付けずにいた。
このドキドキは嬉しさからではない。
恐怖と緊張からくるドキドキだ。
自分でわかっているため余計に目が冴えてしまって仕方ない。
「明日なんか…来なければいいのに」
愚痴を言ってみたところで無駄なこと。
自分の運命はすでに決まっている。
明日、まだ会ったこともない年上の男性と一緒になるのだ。
痛みに耐えるようにギュッと目をつぶり、寝台の中で丸くなった時だった。
「ピチチ…」
昼間によく見掛ける小鳥の鳴き声。
首を動かして窓辺を見遣れば、月明かりの下に漆黒の小鳥がいた。
窓辺に留まった状態で、こちらをジッと見つめている。