1章 出会い
あのとても暑かった夏の日は、今でも覚えてる。
心配そうに私を見つめる君。
そんな君の優しさにまた一粒涙が出た。

「大丈夫。君なら大丈夫。」

何度も、何度もそうやって頭を撫でてくれたね。
逆光で君の顔見れなかったけど、名前は覚えてるよ。
『竹内 健斗』
あの日、また会おうって約束したのに君は来なかった。
あの日から、私の心は、閉ざされたまま....。
ねえ、君はどこへ行ったの・・・


ジリリリリリリリーー


━バシッ

「はあ...またあの夢かよおー...。」
私の名前は、『木下 杏』中1です。いちおう...。
親が小学のころに別れてから、今は母親とくらしてます。
今日からまた学校、学校にいったってねー。楽しいことなんて無いし。

「まあ、行きますかー。」

━タッタッタ

「おはよ。」
「......。」
「もう行くの」
「...うん。」

━ガチャ

「いってらっしゃい」
「.....。」

━バッタン

母親とはいつもこう。話すことなんて無いし。だいたいめんどいし。

「はあ。」

そういえば、あの日会った君はどこへ行ったんだろう。
もう会えもしないのにな。

角を曲がろうとしたとき、私は誰かとぶつかった。

━ドン

「...!?いってーなー!!どこみてん・・・」
そのとき私は、目を疑った。だってそこには、
あの日いなくなった君が居たんだから....。
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