人魚姫の罪
初めて春から聞いたかもしれない。

今まで俺からしか言わないような内容だった。
俺と同様、春も海水浴はしたがっていなかった。
もしかしたら春は
俺以上に海が嫌いなのかもしれない。
だって
お袋も親父も、春の記憶にはないのだから。

そんな春が俺に海に誘うのは
何か意味があるのだと察知した。
「分かったよ。」

春から顔をそらし、言った。

「そーだぜ、兄ちゃん!
地元の海に入らないで何が男だっつーはなしだよ!」

そう笑顔で言うと、ご機嫌で玄関へ飛び出した。
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