人魚姫の罪
久々のおとうととの雑談に

なんだか幸せを感じた。
1年も会っていなかったから。

この一年
こいつの生活を見ていないから
いいきることはでいないけれど
こいつはこいつできっと、頑張ってるんだなと思った。

古いコンクリートの道を歩けば
海についた。
11年まともにかがなかった磯の匂いが鼻をぬけた。
柔らかい白い砂は動く足を茶化しているようだった。
「海だぁー!」

春が海に向かって走り出した。
「転ぶぞ。」
「はぁ?大丈夫だっつの!」



お袋……いや、母さん。

母さんが死んだ海岸。

父さんが死んだ海。

なぁ、

なんで海なんだよ。


そう心の中でつぶやいた。

「兄ちゃん?」

「ん?」


はしゃいでた春が振り返った。


「あの日さ、なにがあったんだよ?」
「あの日?」
「11年前の今日。母さんが死んだ日。」

耳を疑った。
ここ11年、まともに口に出してない内容を
とうとう口に出す日が来てしまったのだと
なんだか辛く感じた。

「俺な、11年前の今日、おぼれたんだ。海に。
でな。
溺れたはずが、海岸にいてさ。
目ぇさましたら母さん倒れててな。
真っ白な顔して笑ってたんだ。

慌てて救急車で運ばれたけど
脳死。駄目だった。」


脳死。
脳が死ぬって事。

10歳の俺は脳死がわならなくて近くの本屋という本屋に行っては、本を探した。

脳死、簡単に言えば脳が死ぬこと。
それを見た時は本屋で泣き崩れたんだっけ。
10歳の記憶が11年ぶりによみがえってきた。


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