マサハルさん
「アチラ?」
気がつくとハナが僕に話しかけていた。
目の前で小さな手をヒラヒラとさせている。
「どした?」
僕はリモコンでテレビの音量を小さくしながら、ハナに答える。
マサハルさんは、一度だけ、チラリとリモコンを見た。
「ハナもガリガリ君、食べたい」
「ハナはジュース飲んだだろ?」
「だって……」
僕はキッチンに立つと、小皿とスプーンを取ってきた。
ハナにガリガリ君を分けてやるつもりだ。
本当はこうやって分け与えるのは、あまり、よろしくないのかもしれない。
普通だったらしない。
だけどこの時は、シズカさんのことを考えていたせいか、母親がいなくても頑張っているハナに、少しだけ、ご褒美をあげたかった。