マサハルさん
相手の家に着く。
インターフォンを押し、来訪を告げる。
開錠される音が聞こえ、僕は、ハナだけが悪いんじゃないという期待を込めて、ドアノブを握った。
ドアを開けると、明らかに立腹している母親の姿が見えた。
その太ももに縋り付くように甘える男の子。
右の耳を覆うガーゼは、三本のテープで適当に止められていた。
「この度は、大変申し訳ありませんでした……」
僕の両手は塞がっている。
右手には、さっきスーパーで買った、お詫びの菓子折りの包みが。
左手にはハナの小さく柔らかい手が握られている。
その小さな手が、僕が頭を下げるたびに、ギュッと力を込めてくる。